飲食店のオーダリングシステム導入判断|業態・規模・客層で「入れない」も正解

飲食店のオーダリングシステム導入判断 店舗運営

モバイルオーダーやタブレット注文を導入する店が増え、「うちも入れないと時代遅れになるのでは」と焦っている方も多いと思います。

先に結論を言います。オーダリングシステムは業態・店舗規模・客層の3つの軸で決まるもので、「入れない」が正解の店も普通にあります。カウンター十数席の寿司屋なら手書き伝票で十分ですし、年配のお客様が中心の店に無理にスマホ注文を入れると、常連を遠ざけることさえあります。この記事では、流行に流されないための判断軸を整理します。

オーダリングの4方式と、それぞれが解決すること

まず方式を整理します。大きく4段階あります。

  • 手書き伝票・口頭: 昔ながらの方式。設備投資ゼロ。接客そのものが注文経路になる
  • ハンディ端末: スタッフが注文を入力し、厨房へ自動伝達。聞き間違い・書き間違い・通し忘れを防ぐ
  • 卓上タブレット(セルフオーダー): お客様が席で注文。追加注文の取りこぼしを防ぎ、ホールの人数を減らせる
  • モバイルオーダー: お客様自身のスマホで注文・決済まで完結。テイクアウトの事前注文にも使える

世の中の流れとしては、スマホやタブレットで注文した経験のある人は各種調査で7割前後まで急速に増えています。ただしこれは世間全体の平均値です。あなたの店に来るお客様の平均ではない——ここがこの記事でいちばん伝えたいことです。

「入れるほど良い」ではない|3つの軸で判断する

軸1: 店舗規模|カウンター主体の店は伝票で十分

席数十数席、カウンター主体の寿司屋・割烹・バーのような業態では、注文のやりとり自体が接客の一部です。大将との会話で「今日は何がいい?」と決まっていく店に、タブレットを置く意味はありません。手書き伝票と口頭で何も困らないどころか、その方が店の価値を保てます。

オーダリングの効果が出始めるのは、ホールスタッフが複数人で何卓も掛け持ちする規模からです。目安として、ホール2人以上で20〜30席を回すあたりから、ハンディによる伝達ミス防止と歩数削減の効果がはっきり出ます。

軸2: 業態|追加注文が多い店ほど効果が大きい

居酒屋や焼肉のように追加注文が売上を左右する業態では、セルフオーダーの効果が大きくなります。「すみません」と手を挙げたのに気づいてもらえなかった注文は、そのまま機会損失です。席から好きなタイミングで頼めるようにするだけで、ドリンクの追加が目に見えて変わります。

逆に、コース主体で提供順が決まっている業態には、席上のオーダリングはほぼ不要です。また、ファストフードやテイクアウト主体の店なら、行列対策として事前注文できるモバイルオーダーが向いています。同じ「オーダリング」でも、業態によって選ぶ方式がまったく違うのです。

軸3: 客層と地域|年配のお客様はスマホ注文を嫌がる

いちばん見落とされがちなのがこの軸です。年配の客層が中心の店では、スマホでのQR読み取りや画面操作そのものが負担になります。操作の問題だけではありません。「注文は人に頼みたい」「せっかく来たのに機械と話すのか」という心理的な抵抗も根強く、キャッシュレス決済が前提になっているシステムだとさらにハードルが上がります。

私も苦い経験があります。年配の常連さんが多い店で卓上端末を導入したところ、結局スタッフが横について操作を代行することになりました。注文を聞いて、端末に打ち込む——二度手間です。ホールを減らすつもりが、かえって1卓あたりの対応時間が延びてしまいました。最終的には紙のメニューを全卓に戻し、端末は使いたい人だけの併用にして、ようやく落ち着きました。

出店地域によっても浸透度は違います。都心のオフィス街と、地方のロードサイドでは、お客様のスマホ注文への慣れがまるで違います。導入する場合も、紙メニューと口頭注文を残すハイブリッド運用を前提に設計するのが現実的です。

店のタイプ別・現実的な選択の早見表

店のタイプ現実的な選択
カウンター主体の寿司屋・割烹・バー(〜15席前後)手書き伝票・口頭のまま。接客が価値
年配客層中心の食堂・喫茶伝票のまま、規模によりハンディ。スマホ注文は原則見送り
居酒屋・焼肉(30席〜、追加注文が多い)ハンディ、その先に卓上セルフオーダー(紙併用)
カフェ・ファストフード・テイクアウト主体モバイルオーダーで行列と待ち時間対策
観光地・若年客層・インバウンドが多い店セルフ/モバイル積極活用(多言語対応も視野)

あくまで目安です。同じ業態でも立地と客層で答えは変わりますから、「隣の店が入れたから」ではなく、自分の店のお客様の顔ぶれで判断してください。

導入を決める前の3ステップ

① ボトルネックを特定する

何に困っているのかを先に言葉にします。注文の聞き間違いが多いのか、ピークに注文を取り切れていないのか、ホールの人手が足りないのか。課題によって選ぶ方式が変わります。困りごとが特にないなら、入れる必要はありません。

② 自店の客層で小さく試す

常連さんの年齢構成、スマホ決済を使っている割合を、レジ前で1週間観察するだけでも判断材料になります。導入するにしても、いきなり全卓ではなく、一部の卓やランチ帯だけで試して、お客様の反応を見てから広げるのが安全です。

③ POSレジとの連携を確認する

オーダリングは単体で選ぶものではなく、POSレジとセットで考えるものです。注文データが売上分析につながらなければ効果が半減します。POSレジの選び方の記事で書いた5つの基準とあわせて、オーダリング機能の有無・連携可否を確認してください。

まとめ|流行ではなく「自分の店の1日」で決める

オーダリングシステムは人手不足時代の強力な道具ですが、万能ではありません。規模が小さくて接客が価値の店は伝票のままでいい。追加注文で稼ぐ業態なら効果は大きい。年配客層の店は無理をしない。この3軸で考えれば、営業トークに流されずに判断できます。

導入する場合も「入れて終わり」ではなく、紙との併用から小さく始めて、お客様の反応を見ながら広げる。道具はいつでも足せますが、離れた常連は簡単には戻りません。

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