原価率の正しい計算|理論原価差異をどう埋めるか

原価率の正しい計算|理論原価差異をどう埋めるか お金と数字

「うちの原価率はだいたい3割くらいです」。開業したばかりのオーナーに尋ねると、多くがこう答えます。ですが、この「くらい」で経営していると、利益は毎月、静かに漏れ続けます。しかも本人はどこから漏れているかに気づけません。

先に結論を言います。原価率には「理論原価」と「実際原価」の2種類があり、繁盛店とそうでない店の差は、この2つのズレ(差異)を追えているかどうかに出ます。この記事では、現場で何度も原価の穴に泣かされてきた経験から、差異の正体と、それを埋める手順を整理します。

原価率には2種類ある——「理論」と「実際」

まず言葉を分けます。ここが混ざっていると、いつまでも原価はコントロールできません。

理論原価——レシピどおりに作ったら、こうなるはずの原価

1品ごとに、使う食材の量と単価を積み上げて計算した原価です。たとえば、あるパスタが1皿あたり材料費390円、売価1,300円なら、その料理の理論原価率は30%です。メニュー全体を「売れた数 × 各料理の理論原価」で足し上げれば、その月に本来かかっているはずの原価が出ます。これが理論原価です。

実際原価——ほんとうに消えた食材費

こちらは棚卸(たなおろし)で出します。計算式はシンプルです。

  • 実際に使った食材費 = 月初の在庫金額 + その月の仕入金額 - 月末の在庫金額
  • 実際原価率 = 実際に使った食材費 ÷ 売上

ポイントは、月末に冷蔵庫と倉庫の在庫を数えて金額に直す「棚卸」を必ずやることです。これをサボって「仕入額 ÷ 売上」で済ませると、月末にたまたま在庫が多かった月は原価率が跳ね上がって見え、数字が信用できなくなります。

差異こそが、利益の穴が空いている場所

理論原価は「本来こうなるはず」の数字、実際原価は「現実にこうなった」数字です。この2つの差が理論原価差異です。理論が30%なのに実際が38%なら、8ポイント分——売上が月300万円の店なら、月に24万円が「レシピの計算どおりに使ったのでは説明がつかない食材費」として消えている、ということになります。

私自身、店を任され始めたころにこれで痛い目を見ました。メニュー表の原価計算では利益が出る設計になっているのに、月末に締めると思ったより現金が残らない。犯人がわからず「今月は忙しかったから」と気のせいにしていました。棚卸をきちんと取って実際原価率を出し、理論と並べて初めて、8ポイントもの穴が空いていることに気づいたのです。差異は「見ようとしないと見えない」から怖い。これが実感です。

差異が生まれる4つの原因

差異は「なんとなく」では埋まりません。原因はだいたい次の4つに分類できます。自分の店の穴がどこにあるかを、この4つで棚卸ししてみてください。

  • 歩留(ぶど)まりの見込み違い——魚をおろす、野菜の皮をむく、肉を筋引きする。仕込みで捨てる部分の割合を甘く見積もると、レシピの理論値より実際は多く食材を使います。
  • ポーション(盛りの量)のブレ——目分量で盛ると、忙しい日ほど1皿が少しずつ大きくなります。1皿の差はわずかでも、月に何百皿と積み上がれば大きな差異になります。
  • 廃棄とつくりすぎ——仕込みすぎて売り切れずに捨てる、発注しすぎて傷ませる。これは差異の中でも一番わかりやすく、一番減らしやすい部分です。
  • 管理の抜け——まかない分を原価に入れていない、伝票を通さずに提供したサービス品、そして棚卸の数え間違い。地味ですが積み重なります。

差異を埋める4ステップ

① 標準レシピ(原価表)を作る

すべての基準はここです。主要メニューについて、使う食材と分量、歩留まりを織り込んだ原価を1枚の表にします。これがないと「理論原価」そのものが存在せず、差異を測るものさしがない状態になります。全品でなくていいので、売れ筋の上位から作りましょう。

② 毎月かならず棚卸をして、実際原価率を出す

月末の同じ曜日・同じ時間帯に、在庫を数えて金額化する習慣をつけます。面倒に感じますが、実際原価率が出せない店は、そもそも差異を語れません。月次でこの数字を出し続けることが、経営の土台になります。

③ 食材別に「理論の使用量」と「実際の使用量」を突き合わせる

ここが差異追及の心臓部です。ポイントは、商品別で止めずに原材料(食材)ひとつずつまで落とすこと。「この料理は原価が高い」まではわかっても、それだけではどの食材が犯人かまでは特定できず、対策が打てないからです。

手順はこうです。まずPOSレジの商品別販売数に標準レシピを掛けて、食材ごとの「理論使用量」を出します(例:パスタが月200食売れ、1食の麺が90gなら、麺は18kg使うはず)。次に、食材別の棚卸——期首在庫 + 仕入 - 期末在庫——から「実際使用量」を出し、食材を1品ずつ並べて差を取ります。この差が、食材別の差異です。

そして出てきた食材別の差異を、「量」と「金額」の両方でソート(並べ替え)して、大きいものから順に対策します。両方を見るのには理由があります。単価の安い食材(油や付け合わせの野菜など)は量で大きく出やすく、単価の高い食材(肉や魚)はわずかな量のブレでも金額で大きく響きます。量順だけ、金額順だけでは、どちらか片方の穴を必ず見逃します。

たとえば、ある月の差異を食材別に並べると、こんな表になります。

食材理論使用量実際使用量差異(量)単価差異(金額)
牛肉40.0kg42.5kg+2.5kg2,000円/kg+5,000円
鶏肉60.0kg63.0kg+3.0kg900円/kg+2,700円
サラダ油30.0L38.0L+8.0L300円/L+2,400円
キャベツ50.0kg58.0kg+8.0kg150円/kg+1,200円
※数値は考え方を示すための一例です

同じ表でも、金額で並べれば最優先は牛肉(+5,000円)、量で並べれば目立つのは油とキャベツ(ともに大きく超過)です。牛肉は量のブレはわずかでも単価が高いので金額で効き、油やキャベツは単価が安くても使いすぎの量が大きい。もし金額順しか見ていなければ、油とキャベツの「使いすぎという現場の問題」を見落とします。だから両方で並べるのです。手をつける順番は、まず金額インパクトの大きい食材から。量で大きいものは、歩留まりや盛り付けなど現場の作業に原因があることが多く、あわせて手を打ちます。

ここまで来ると、対策が「気合い」から「作業」に変わります。商品別の販売数を正確に取るにはPOSレジが前提になります。選び方はPOSレジ比較の記事で詳しく書いています。

④ 原因カテゴリごとに、ひとつずつ潰す

差異の大きい食材が見えたら、さきほどの4原因のどれに当たるかを現場で確かめます。歩留まりなら仕込みの手順を見直す、ポーションなら計量スプーンや盛り付けの基準皿を用意する、廃棄なら発注量と仕込み量を調整する。一度に全部やろうとせず、金額インパクトの大きいものから順に潰していくのがコツです。

まとめ——差異を「毎月の習慣」にできる店が生き残る

原価管理は、値上げや高い食材をやめることではありません。理論と実際のズレを毎月見て、原因をひとつずつ潰していく——この地味な習慣があるかどうかです。同じ売上でも、差異を3ポイント締めれば、それがまるまる利益になって残ります。

開業して最初の数か月をどう乗り切るかは開業後3ヶ月の数字管理の記事に、原価率を踏まえたメニュー価格の考え方はメニュー価格設定の記事にまとめています。あわせて読んでみてください。

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