メニューは「品書き」ではなく、店の収益設計図です。何品載せるか、いくらで売るか、どれを看板にするか。この設計を間違えると、繁盛しているのに儲からない店ができあがります。この記事では、業態開発の現場で使ってきたメニュー設計の考え方を紹介します。
品数は「上限」を決めて絞る
メニューを増やせば客層が広がる、は思い込みです。品数が増えるほど、仕込みは重くなり、食材ロスは増え、一品ごとの味の管理は甘くなります。私が関わったイタリアン業態では、食事メニューは70アイテムを上限と最初に決めていました。競合チェーンの品数を数えたうえで、「これ以上は増やさない」という線を先に引いたのです。
個人店ならもっと絞って構いません。大事なのは「何を載せるか」より「何を載せないか」。コンセプトの記事で書いた看板商品を軸に、カテゴリーごとに数を決めて管理してください。
プライスライン(価格の本数)は3本に絞る
値付けでやりがちなのが、398円、450円、520円、580円……と価格がバラバラに並ぶメニューです。お客様は選ぶのに疲れ、店は原価管理が複雑になります。
私が手掛けたイタリアン居食屋(居酒屋業態)では、単品の中心価格を280円・380円・480円の3本に絞っていました。これをプライスラインと呼びます。ただし、これはあくまで当時の居酒屋業態での価格水準です。昨今の食材や人件費の高騰を踏まえれば、同じ業態でも今なら各ラインを1〜2段引き上げた設定になるでしょう。大事なのは金額そのものではなく、価格の本数を3本に絞るという設計思想です。価格の本数が3本だと、お客様は「安い・普通・ちょっと贅沢」で直感的に選べます。店側は「いちばん上のラインの皿には何を載せるべきか」と、価格から逆算して商品を設計できるようになります。
原価率は「一皿」ではなく「全体のミックス」で見る
「原価率30%を守れ」と言われて、全メニューを機械的に30%で値付けする。これが二つ目のよくある失敗です。
看板商品は、あえて原価をかけます。「この値段でこれが食べられるのか」という驚きが集客の燃料になるからです。その分は、ドリンクやサイドメニューなど原価の軽い商品で回収する。大事なのは一皿ごとの原価率ではなく、注文全体を混ぜたときのトータル原価率です。当時の設計では、皿ごとの原価率に高低をつけながら、全体で34%前後に収まるように組んでいました。
このトータルで見る考え方は、開業後の数字管理(理論原価と実際原価の差を追う管理)にもそのままつながります。この話は別記事で詳しく書く予定です。
「注文モデル」から客単価を設計する
客単価は「結果」ではなく「設計」です。当時の業態では、「1人が3皿+ドリンク2杯」という注文モデルを先に決めていました。一皿の量目を250〜300gに抑えて何皿も楽しめるようにし、平均皿単価×3皿+ドリンクで客単価が自動的に決まる構造です。
あなたの店なら、お客様は何品頼んで、何杯飲むのか。その合計が売上予測で使う客単価と一致しているか。メニュー表を作る前に、この注文モデルを一度紙に書いてみてください。
値ごろ感は競合との比較で決まる
お客様は、あなたの店の価格を単体では評価しません。周辺の競合と比べて「高い・安い」を判断します。当時は競合チェーンのメニューを価格帯ごとに全部数えて分布表を作り、「単品は競合と同等以下」という基準を先に決めました。ここまでやれば、値付けに迷いがなくなります。
まとめ|メニューは経営の意思表示
- 品数は上限を先に決めて絞る(載せない勇気)
- プライスラインは3本に絞り、価格から商品を設計する
- 原価率は一皿ではなくトータルミックスで管理する
- 注文モデル(何皿+何杯)から客単価を設計する
- 値ごろ感は競合の価格分布を数えて決める
メニューの土台になるコンセプトの決め方はこちらの記事で解説しています。

